耐震改修リフォーム
耐震改修リフォームは、耐震性能の向上を目的としたもので、家全体の性能を高める性能向上リフォームとは異なります。
県や市町村の補助制度と密接につながりをもちながら行います。
概ね工事費は100~200万円の事例が多く、60~120万円(自治体により異なる)の補助金が支給されます。
プリズム建築設計室への調査・設計料は25万円(税別)、監理料は工事費の10%(税別)となります。
別途、地盤調査試験費(SWS試験 約3万円)がかかります。
支払いは、契約時に5万円(税別)、詳細調査完了時に10万円(税別)、改修設計完了時に10万円(税別)、工事完了時に監理料の全額となります。
それでは、耐震改修リフォームの流れをご説明します。
①耐震診断(市町村補助)
耐震診断を、地元の市町村に申し込みます。市町村別の窓口はこちら。
申し込みの際に、診断員としてプリズム建築設計室を希望される場合には、事前にご相談を下さい。
市町村ごとに年間の予算枠がありますので、できる限り年度初頭に申し込みをして頂けますようお願いします。
また、年度末期の場合には、次年度以降の申請についても相談を承っています。
対象住宅:
次の要件すべてに該当する木造住宅(併用住宅(住宅部分が2分の1を超えるもの)、共同住宅、長屋、借家も対象)
耐震診断の費用:
- 自己負担額は3,000円。
- 一部の市町村では、無料又は半額です。(平成29年4月1日現在)
- 無料:徳島市、吉野川市、三好市、勝浦町、石井町、松茂町、北島町
- 半額(1,500円):鳴門市
耐震診断(市町村補助)を行うと、公的機関より「上部構造評点」が与えられます。
「上部構造評点」が1.0(100点と理解してください)を超えていると建築基準法相当で震度6弱の地震にて倒壊しない可能性が高いと判断されます。
1.5(150点)だと新築住宅の耐震等級3と同等程度の耐力壁量のある住宅ということになります。
0.7(70点)より低い住宅が、耐震改修補助の対象になります。
なお、当該調査は、あくまでも簡易調査のため、床下や天井裏は点検口がある場合に、頭を入れて見渡せる範囲をみるだけであり、
中にまで入って行って調査をすることは行えないようになっています。
②詳細調査(市町村補助外)
耐震診断(市町村補助)は、一軒でも多くの住宅をより安価に診断をすることを前提にしており、『一般診断法』にて診断をしています。
本来、『一般診断法』は、補強の必要性を確認するためのものであり、耐震改修設計のための調査ではありません。
ただし、徳島県内では高度な技術力が必要な『精密診断法』をできる技術者が少なく、『一般診断法』にて耐震改修が行われています。
耐震改修設計を行うためには、精密診断法による必要があり、プリズムでは精密診断法を行うために、詳細調査を行っています。
プリズムは、徳島県登録耐震診断資格者だけでなく、上級の国土交通大臣登録耐震診断資格者となっています。
精密診断を行うために、詳細調査を行います。
詳細調査は、床下と小屋裏の全てに進入し、劣化、シロアリ、雨漏り、部材の接合方法などを調査します。
プリズムから一級建築士2名(うち1名は住宅医)と大工さん1名、SWS試験技術者1名にて調査を行います。
まずは、雨漏れ関係等の劣化状況のチェックから。
室内にて、天井や壁の雨漏れ跡等のある個所を確認していきます。
その後、屋根と軒天とをチェックしていきます。
屋根の瓦のずれている位置や、材が痛んでいる箇所等をみつけ、
雨漏れとの関連性を調査し、できる限り原因を突き止めていきます。
軒天に劣化がないか、雨漏れがないか、有効な換気口があるかもチェックをします。
天井裏に潜れる場所を探し、ない場合には点検口をつくり、小屋裏に入っていきます。
野地板の雨シミ等をみるとともに、含水率等を調査し、現在も雨漏れが起きているかを特定していきます。
床下にも潜るため点検口を設けます。
床下にももぐり、基礎、土台等をくまなく調査をしていきます。一本一本の材に含水率計を当て、
含水率が上がっている部材(雨漏れやシロアリ被害を受けている可能性がある)がないかどうかを
チェックしていきます。
屋根の雨漏れが床下にまで伝わっている場合もあるし、お風呂の水が漏れている場合もあります。
問題を総合的にみることが重要です。
こういう状態の室内でも、構造体はしっかりしている場合もあります。
現にこの建物は構造体は劣化一つなく、大変に丈夫な状態でした。
床、天井をとった状態です。土台、柱、梁に一切の問題がありません。
先に調査をしておくことで、解体をする前に、こうした状態であることが分かっていました。
リフォームといえば、開けてみないと分からない、追加料金の発生がつきもののように思われていますが、
先に詳細調査をしておけば、『開けてみる前に分かっている』のです。
次に、構造に関する調査を行います。
まずは、基礎巾木です。パールハンマーを用いて、基礎巾木の仕上げ材に浮きがないかを調べていきます。
また、水切りがついているか、通気層があるかもチェックをします。
ひび割れがある場合には、ひび割れの幅を、クラックスケールにて確認をしていきます。
鉄筋が入っているかどうか、鉄筋探査機にて調査をします。
床下に入り、外部と同じ箇所にひび割れがある場合には、そのひび割れが貫通していると判断をします。
内部からも鉄筋探査機を当て、鉄筋の有無を調べていきます。
たまにシロアリ駆除業者が基礎を壊して侵入していった跡をみることがあります。
他にも除湿装置とかあやしい塗料とか。
建物が載っている地盤の状況を調査するため、屋内にてSWS試験を行います。
小屋裏に潜り、火打ちが入っているか、土壁が梁までついているか、小屋梁や母屋等が適切な太さがあるか、
接合部に金物がついているか、筋交いがあるかなど、様々な調査を行います。
柱に傾きがないか、ある場合にはどの方向にこけている傾向があるかを調べます。
床についても同様に傾きを調査していきます。
こうした調査の結果を、報告書に整理します。
報告書では、住宅の現在の劣化状況と、耐震性能を点数化し、分かりやすくお伝えをするようにしています。
新築の長期優良住宅を100点とした場合に、現在何点の性能があるのかを示し、また、このように改修を
すれば数字が上がり、家自体も上部で長持ちになるということをご説明しています。
一つ一つの劣化状況や耐震部材について、写真をもとにどのような状況にあるのかを説明させて
頂きます。
この他に、調査図面を清書したもの、全ての写真、SWS試験報告書、野帳、土地分析資料等を
報告書にお付けしております。
③耐震改修設計
調査結果をもとに、耐震改修設計を行います。
耐震改修設計は、100人いれば100通りの方法があります。
その中で、私たちは次の点にこだわっています。
- 評点は出来る限り1.5に近づけるように設計をする。
- 工事費が最も安くなるように改修箇所を見極める
- 改修をしたい箇所(キッチンをリフォームしたい、トイレを暖かくしたい等)とセットにした工事費を減らす
- 評点とは直接関係のない横架材接合部(母屋を含む)にも金物をつける
- 同様に、梁・束接合部についても金物をつける
- 梁のかけ方に問題がある場合には、梁をかけなおす等して力の流れをよくする
- 基礎のつくり方に問題がある場合には、基礎をさわると工事費が増えるため、梁や柱の方で工夫をして力の流れをよくする
- 地震力が建物全体で分散されるように、可能な限り床面を強くする
④工事費算出
耐震改修設計ができたら、工務店に工事費を算出してもらいます。
プリズムでは、主に上板町と阿波市の耐震改修を行っており、次の工務店さんと一緒に仕事をしています。
(ですので、概ねの工事費を把握しております)
- 上板町・・・坂東工務店、有限会社阿波工機
- 阿波市・・・大工工事マスダ
他市町村の場合には、できる限り地元の工務店さんにお願いをするようにしています。
耐震改修の補助金は、県民の安心安全を守るためであり、かつ地元企業の育成のためにあると考えています。
また、地元企業の場合には、追加の補助金がもらえる自治体もあり、施主さんにとってもお得な場合が多いためです。
⑤補助申請
工事費が固まったら、補助金の申請を行います。
許可後に、工事契約を巻いていただき、工事着手となります。
⑥工事中の監理
耐震改修リフォームを申請される方は、在宅の高齢者の方が多い傾向にあり、できる限り毎日現場に行き、
工事の内容を説明したり、これからの仕事の流れを説明したり、世間話をしたりと、顔を出すようにしています。
暮らしながらの工事というのはストレスにもなりますので、第三者の目で工事が施主さんに負担になっていないかを
みています。
工事は部屋事に順番に行うのが一般的です。この部屋が終わったら次の部屋という形で工事を進めていきます。
では、耐震改修の流れをご説明いたします。
まずは養生です。既存の床が傷まないようにべニア等で養生をします。
クロゼット等にほこりが入らないようにビニールにて養生を行います。
エアコンもほこりが大敵なので養生をします。
はじめに、既存の壁を撤去して柱を表します。
耐力壁を土台から梁まで施工する場合には、床と天井も撤去します。(工事費は大きいが耐力は強い)
耐力壁を床から天井まで施工する場合には、床と天井は撤去せずに壁のみを撤去します。(安いが耐力は低い)
押し入れのような小さな部屋の場合は、床と天井を落として復旧しても安いため、そういう場所では耐力壁を土台から
梁まで設置するように設計をしています。
また、台所を一室リフォームして床も天井も新しくしたいという場合にも、耐力壁を土台から梁まで設置するように設計をしています。
それらで耐力が足りない場合には、廊下の一角等で、耐力壁を床から天井まで設置するようにしています。
次に、柱と梁に柱頭柱脚金物を取り付けていきます。
強い耐力壁を使うと、その分、その柱や梁にはより強い引き抜き力を受けるようになります。
柱や梁が引き抜かれてしまうと、耐力壁自体の力を使い果たすことができないため、
引き抜きを防止するための金物を取り付けていきます。
どれだけの地震力がかかるかは、N値計算によって求めます。その計算結果通りに金物が施工されているか、
一つ一つチェックをしていきます。
金物がついたら、耐力壁を取り付けるための下地を取り付けます。
下地を取り付けるために、一部土壁を漉き取る場合もあります。
下地に耐力壁を取り付けていきます。面材の厚み、釘の太さ、釘を打つ間隔で耐力が決まるので、
図面通りに施工されているかチェックをしていきます。
耐力壁を取り付ける箇所以外にも、できる限り金物をとりつけ、耐力を向上させるようにしています。
梁と梁、母屋と母屋の接合部が地震時に離れてしまわないように、帯金物等で固定をしていきます。
地震時に均等に力を流せるように、水平構面を固めるため、必要な数の構成火打ちを取り付けていきます。
当初施工時から梁がつながっていない等問題のある施工の場合には、梁受け金物等を設けて、
梁を連続させ、地震力が流れやすいような構造をつくりあげていきます。
キッチンのリフォーム等も合わせて行い、耐震改修とリフォームとの重なる工事を一緒に行い、
コストを下げていくようにしています。
⑧定期検査
竣工後、毎年、定期検査を行っていきます。ここで、当初設計通りに光熱費や部屋11の温度が維持できているか環境家計簿等によりチェックし、
異なる場合にはアドバイスを行っていきます。
詳しくは、『「みんなの家」って どんな家?』「10.建てた家を一年に一回、住宅医と一緒に定期検査+環境家計簿もつけてもらいます」を参照してください。
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